鉄 vs 真鍮

2019-03-31

日々のメンテナンス作業を通して様々なモノを触る機会をいただくのですが、その殆どが古い物ですので現在同じモノは流通しておらず、直すか作るか、または現行品へ交換するかの選択肢になります。

下の写真は、19世紀に建てられた歴史的建築物の屋内装飾のパーツを修理しているひとコマです。
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負荷のかかる場所ということもあり、真鍮鋳物で作られた丸型ギボシの根元が折れて心棒から外れています。
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照明パーツに見られるようにギボシにボルトが入っているタイプものなら、折れたボルトを取り除いて新しいものと入れ替えようと思っていましたが、折れた部分を少し削って断面をよく見るとボルトも一体型でひとつのピースで削り出されたものでした。
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「じゃぁ、穴開けてタップでねじを切ろう」とやることは分かっているものの、工房とは違い現場作業のためボール盤もバイスもありません。
指で押さえてもぶれて穴が歪んだり、インパクトドリルの回転力に負けてどこかに飛んで行っても困ります。
ですので、一旦持ち帰ることも考えましたが、よく考えると家具の取っ手を直すのと同じことなので角材に穴を彫りました。
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球体はほんの少し小さく開けた穴に叩き入れることで固定できますので、バイスで挟むと傷が付くモノや潰れる可能性のある中が空洞のモノにも有効な固定方法です。
しっくりくる鉄のボルトを選んで元に戻しましたが、最後ギボシが抜けなくてちょっと焦りました(笑)


次の写真は、19世紀に作られたイギリスの椅子に打たれていた鋲です。
カバーは真鍮製ですが、鋲自体は鉄製でした。
メンテナンスに際し全ての鋲を抜きましたが、写真の通り鉄は錆び朽ちていました。
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実際に錆びた鋲を抜く力が勝り、真鍮のカバーが曲がってしまいました。
以前のブログでアンティークの鍵について似たことを書きましたが、永い年月を経た金属としてのそれぞれの特性が表れていますね。
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こちらの椅子は座面生地以外のオリジナル材料をできる限り使い、本体は組み直しましたが再塗装を行わず現状の雰囲気をそのまま残すメンテナンスでした。
もちろん鋲も戻すことになりますので曲がったカバーを整え、錆びや緑青を落としてクリーニングしました。
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最後は鉄だった鋲をカバーから抜き取り、真鍮の小釘に替えて仕上げました。

どちらの素材を用いてそれぞれをメンテナンスしたほうが良いか、正解は来世紀までお待ちくださいませ。

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