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#107『アン』

2024-01-28

既に商品ページへ掲載している二点も含みますが、現在英国倉庫に保管しているアイテムを少しだけご紹介いたします。
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先ずは、ジョージアン(GeorgeⅠ~Ⅳ治世時代 1714-1830年)のダイニングセット/Rosewoodです。
意匠で言うとリージェンシー様式になり、前々回のブログに書いた通りジョージ4世の時代を指しますので、その最終年をとって『1830年代 Rosewood リージェンシーダイニングセット』と表記しています。

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次も同じく、ジョージアン(GeorgeⅢ)のソーイングテーブル/Rosewoodです。
天板が開き中が収納になっていますので、小物の整理にも役立つと思います。
椅子と合わせてワークテーブルやティーテーブルとして、また花台やサイドテーブルとしてもお使いいただけます。
ちなみに、今も糸やボタンなどの裁縫道具が入っています♪

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次は、少し時代が進んだビクトリアン(Queen Victoria治世時代 1837-1901年)のペンブロークテーブル/Mahoganyです。
発案者とされるペンブローク伯爵に因んで名付けられた18世紀のデザインですが、その見た目も然ることながら当時の生活スタイルに合ったサイズ感と機能性から19世紀に流行しました。

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次も年代は近しいミッドビクトリアンのライティングデスク/Walnutです。
こちらも天板が開き、中にペントレイやインクウェル、レザートップの天板が入っています。
小振りですので、コーヒーテーブルやベッドサイドテーブルとしても活躍してくれそうです。

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次は、1890年頃レイトビクトリアンのセンターテーブル/Mahoganyです。
幅が約1m、奥行き約80cmですので、椅子4脚を合わせたサロンテーブルとしてもお使いいただけます。

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そして次は、もう少し時代を進めたエドワーディアン(EdwardⅦ治世時代 1901-1910年)のキドニーシェイプドデスク/Mahoganyです。
シルエットが特徴的な美しいデスクですが、天板が写真の通りですので、現在英国の革工房でレザーを新調していただいています。

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最後は、再び時代を戻して1830年代(WilliamⅣ治世時代 1830-1837年)のカーヴドゲームテーブル/Rosewoodです。
二重の天板を広げることで正方形になりますので、カードゲームなどをお愉しみいただく他、コンソールテーブルやセンターテーブルとしても使える汎用性の高いアンティークスです。
また、意匠として後のビクトリア時代への変遷もあらためて理解できます。

ところで、日々よく使う単語としてエドワーディアン、ビクトリアン、ジョージアン、もう少し遡ってカロリアン(Charlesのラテン語でCarolus)やジャコビアン(Jamesのラテン語でJacob)、エリザベイサン(主にElizabethⅠを指す)など、時代や様式を表す形容詞として王や女王の名前の語尾にanが付けられます。

でも、今更ながらこのウィリアム4世時代や様式を「ウィリアミアン」って言わないですよね?
ちなみに初代イングランド王ウィリアム1世の頃(日本でいうと平安時代)の様式は、一般的に王朝の名前をとってノルマン様式と呼ばれます。
ステンドグラスがお好きな方には耳馴染みのある様式かも知れませんが、いずれにしても『王の名前にanが付く法則』は当てはまりません。

長く続いたジョージアンとビクトリアンに挟まれ、在位期間が7年という短さのため??
また、兄ジョージ4世に代わって王位に就いたため様式としてはジョージアンでまとめられてしまうから???
それとも、クイーンアン(Queen Anne治世時代 1702-1714年)を『クイーンアニアン』や『クイーンアンアン』と言わないように、言い易さや響きの良さで決まるのでしょうか????

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実際、ウィリアム&メアリー(WilliamⅢ & MaryⅡ共同治世時代 1689-1702年)もそのままですし、ラテン語に変えて呼ばれることに特別な理由が無いのであれば、多くの人が発話する中で聞こえの良さが自ずとそれになったんでしょうね。
(個の意見です)

実は、先日工房へ移動する車内での他愛のない雑談が発端なのですが、何事も一度気になるとモヤモヤするので、何でも知ってるイギリスの著名なアンティークディーラーさんに尋ねてみました。

「なぜ、Williamianって言わないのですか?」の問いに、「ちゃんとした音に聞こえないから」と一蹴されました。
(やっぱりネイティブにしか理解できない響きの良し悪しか。。。)

「では、思い切ってmをnに変えてWillianで良いじゃないですか?」と訊くと、「それはサッカー選手に居るし、シンガーのwill.i.amも居るからややこしい」と。
(それなっ)

「じゃぁWillianの件は諦めるので、Queen Anneianは?」と食い下がると、笑われて終わりました。
(笑わせるつもりで言ったので幸いです)

要は、日本語で言う「一匹(いっぴき)」「二匹(にひき)」「三匹(さんびき)」・・・と同じようなことなんでしょうね。
以前英語圏の友人から、これについて「なぜ数字によって音が変わるの?」と尋ねられ、「とりあえず一桁なら1つ、2つ、3つで意味は通じるから大丈夫」と答えたのを思い出しました。

あ、これ以上はどこかのPUBで飲みながらやれと叱られそうですね(笑)

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不毛な話しはさておき、本によってはジョージⅣとウィリアムⅣの様式をそれぞれ区別して載せているものもあります。
年代としての表記は理解できますが、意匠に関しては明確な違いを定義し難いですよね。

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別の書籍では、1830年と37年の間がサクッと飛ばされているものもあります。
ここで書かれているリージェンシー様式 c.1810-1830は、ジョージ4世の国王在位期間に摂政皇太子時代の10年を含めた約20年間を意味しますが、それに比べると、7年間というウィリアム4世時代には特筆されるべき様式の変化や新しいムーブメントが生まれなかった、もしくはその必要性がなかったのかも知れませんね。

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と言うのも、10年ぐらい前に立ち寄ったブライトンにあるロイヤルパビリオン。

表紙の写真の通り、外観はイスラム教のモスクそのものといった佇まいに、屋内は随所に龍があしらわれるなど中国風のシノワズリ装飾、そして沢山のリージェンシー様式の家具が並ぶ宮殿。
自身の趣味や流行に巨額のお金を費やし、当時の英国王室に経済的損害を与えたと言われるほど浪費家だったジョージ4世が摂政皇太子時代に創った別荘です。

それぞれの空間がとにかく贅沢な作りだったのを覚えていますが、連れて行ってくれた方が「弟のウィリアム4世は若い頃に海軍に入ってたけど、王族ということを隠して一般の人と同じように生活をしたんだ。王様になってからも倹約家だったんだよ」と仰っていたのも印象的でした。

ここだけを切り取ると真逆のお二人ですね。

勝手な想像を膨らませて、65歳で王位を継承されたウィリアム4世は、父ジョージ3世と兄ジョージ4世の様式そのものも継がれたんでしょうね。

もちろん当時の職人さんたちはその7年間をぼーっと過ごしていたわけではなく、日々何かを生み続けていたに決まってますよね。
そして、新たに来たるビクトリア期に向けて腕を揮った時代の転換期だとも考えています。

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ということで、今回は現地在庫のテーブルを幾つかご紹介いたしました☆

昨今の中東情勢から迂回のための航路変更やそれに伴うOCC(運営継続費用)という追加料金など、向こうの海運会社さんからもあまり良い情報を聞かないのですが、状況が少しでも良いほうに向かうことを祈りつつ入荷スケジュールを考えたいと思います。

引き続き探しているモノもありますのでまだ流動的ですが、詳細が決定すればあらためてご報告いたします。

 

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