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#106『エドワード時代のちょっと前と来週のお話し』

2023-12-17

現在メンテナンス中のステンドグラスです。

1900年前後にイギリスで制作されたモノになりますが、形状から建物のエントランスかファサードに入っていた1枚だと思われます。

買付け時に収められていた朽ちかけの木枠を外すとステンドグラス本体もグラグラしていて、一瞬でも手を離すと今にも折れ曲がりそうな状態でした。
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それもそのはず、ガラスピースの至る所が割れていました。
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立てて光を透過させるとよく判りますが、約200ピースのガラスで組まれたパネルの内64枚が割れていて、1枚の中で複数に割れているものも多く、クラックは100箇所ぐらいありました。
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いちから作ったほうが早いんじゃないか?と思いつつも、買い付けた責任(?)もありますのでもちろん修理することにしました。

先ずは四周のボーダーを外して、中のモチーフ部分から作業開始です。
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次にガラス選びです。

今までに集めた古い色ガラスを出してきて、近しいものを探します。
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数や大きさが限られた古いガラス片のため、その全てを賄えるわけではありませんので現行の色ガラスも使用します。
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分解して
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パテを綺麗にして
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開口部を整えて
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新しいピースを作って
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やっぱり、いちから作ったほうが早いと思います(笑)

さておき、ステンドグラスの修理方法として、ざっくり分けると2つ(※)あります。

①割れた個所をケイムで補修する
メリットとしてはオリジナルのガラスは残せますが、デメリットとして割れに沿った金属の線が入ります。

②割れたガラスを入替える
文字通り割れたガラスを取り外して、新たに作ったピースと交換する方法です。
メリットは割付け(輪郭線)を変えずに済むため余計な線は入りませんが、デメリットとして全く同じガラスが無い場合は現存する近しいものでの交換となります。

(※)博物館の収蔵品などでは、上記のどちらでもなく現状の保存を目的とした接着方法もあります
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実際にメンテナンスを行う中で、①または②のどちらで作業するかは職人に任されることが殆どです。
その選択基準としては、既に欠損していたり抜け落ちる危険性がある場合、また割れに沿ってケイムを入れることで著しく意匠が変わる場合はガラスを入替えますが、それ以外は出来る限りオリジナルのピースを残すよう心掛けています。
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今回は、その状態からボーダー部分のケイムは入れ替えることにしましたが、先述の通りアンティークという意味合いと耐久性や見た目のバランスなど、今一度考えながら作業しようと思っています。

今月に入ってから合間合間でずっと触っているのですが、来週末が年内最後の店舗営業になりますので、店頭に並べられるよう決着をつけようと思います。

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