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#121『外す人、付ける人』

2025-07-19

久々のブログ更新になりましたが、特別展『蒐集家・池長孟の南蛮美術ー言葉から紡ぐ創作(コレクション)』を観てまいりました。
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今回もたいへん貴重な品々が展示されており、とても見応えのある特別展でした。
池長氏が生涯をかけて収集された近代異国趣味美術品に加え、仲間の蒐集家、作家、文化人など、氏の当時の交友関係や直筆の手紙なども展示されていて、とても興味深く拝見いたしました。

特に面白いと思ったのは、作品のキャプションに「いつ、誰から、幾らで譲りうけた」と記載のあるモノもあり、博物館の展示品に価格が明記されているようで新鮮でした。
もちろん、その価格は今の価値を表すものではなく、氏が譲り受けた際の値段ですので、それに至るまでのモノとの出会いや交渉術、そして蒐集家としての目利きや情熱など、いろいろな想像が溢れて楽しかったです。

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と言うことで、紅塵荘に実際に入っていた頃の、取り外し前の円形獅子文ステンドグラス(昭和時代初期/日本製)のお写真を
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そして、前回同様お約束の南京町中華♪ 何を食べても美味しいですが、空心菜炒めが好きです。
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さておきまして

次は、私どもが2021年にイギリスで買い付けた、グリザイユとシルバーステインを用いて花の絵付けが施されたステンドグラス(ビクトリア時代後期/英国製)です。
イングランド南部の古い屋敷に入っていたと聞いていますが、その作りと状態から、屋外に面する壁ではなく、屋内の建具に入っていたモノと推測されます。
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今回は、この2枚を使って1つの大きな窓に仕上げることになりました。

ただ繋ぐだけではなく面積を拡張する場合は、出来るだけ不自然にならないように、色味やテクスチャの近い新旧のガラスを混ぜて仕上げるように心掛けています。
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そんな中、絵付けの周りに4個ずつ配置されているジュエルガラスの色味が気になって、ブラックライトを当てると。。。
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やっぱりヴァセリンガラス(ウランガラス)でした!
花器や食器、照明などは比較的目にすることはあるのですが、ヴァセリンガラスのジュエルは初めて見ました。
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また、四隅に入っている4cm角ぐらいの乳白ジュエルガラスも、ケイム(金属線)に入れ込む耳が付いているので、この作品のために作られたピースかと思われます。
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写真の通りピラミッド形で、中央に向かって約15mm出っ張る形状をしています。
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今回のお取り付け場所は浴室でしたので、透明のガラスと重ねてサッシに組み込む仕様のため、先述の出っ張りを裏向けて組み直しました。
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実は、こちらのお住まいは関東圏でしたので、お取り付けくださる現地のサッシ屋さんには、打ち合わせ段階から親身に相談に乗っていただきました。
また、本品の輸送に関しましても、幅が1.5mを超えるステンドグラスでしたので通常の輸送方法が利用できず、建物の施工会社さん全面協力のもと、丁度中間ぐらいの静岡で待ち合わせ、そこで積み替え引き渡しという離れ業でご対応くださいました。
この場を借りて御礼申し上げます。

全力で取り外す人、全力で取り付ける人、本当にたくさんの人が関わって古き良きモノは残っていくんですよね。

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