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#017『染硝子』

2016-08-26

本日、『プロジェクト・施工事例』にUPしましたステンドグラス作業工程。
これも、普段あまりお見せする機会がないので少しだけご紹介します。

今回はお持ちのステンドグラスをお預かりして、メンテナンスを兼ねてご希望の大きさに加工するお仕事でした。

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お預かりした際は木枠に入っており、H435 W830mmで仕上げられていました。
それを、H445 W1225mmに拡張し欄間に設置しますので、先ずは完成イメージを描きます。

イメージのご確認後、作業に入るGoを頂きます。

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シンメトリなデザインですが、正面向かって左端中段の絵付けピースが透明のモールガラス(等間隔の筋が入るガラス)に変わっています。
ですので先ず最初に行ったのが、過去の修理で入れ替えられて無くなっている絵付けピースの制作でした。


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そして、窯で絵付けピースを焼いている間に、拡張するにあたり四周に廻る赤いボーダーガラスを外し、中の市松模様を左右3列ずつ増やします。

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アンティークステンドグラスを拡張する時、特にこだわりたい所は『取って付けた感がない』ように仕上げたいと思っています。
ただし、当時の古いガラスは現存しないものが多く、現在手に入るガラスの中で色味とテクスチャ(表面の波打ち)の近いものを使うことになります。

今回もいつもの材料屋さんに協力してもらい廃番品を含め倉庫の隅々まで探して頂きましたが、一番使えそうなモノはオリジナルに比べて鮮やかな水色でした。

このまま組み上げることも作業的には可能でしたが、明らかに拡張した部分が目立ってしまいます。

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そこで、今回のオリジナルのガラスをいろいろな角度から観察すると、実は目に見えている色よりもっと濃い青緑という印象を受けました。
要は色味の濃いガラスのはずがなぜか光を透過すると水色に見えた理由として、寒色特有の波長の関係(このお話は端折ります)もありますが、一番の原因は板の厚さが薄く光をより多く透過していることにありました。

数字的な根拠は全くなく、あくまでも感覚的に「では、逆に鮮やかな方の透過する光を調整すればいいんじゃないか?」という結論に至りました。

方法としては、絵付けに使用する顔料を薄く溶き、混色して全体に斑無く塗布します。
それを窯で焼き付けることでシェイディングされ、鮮やかだった水色が緑に振って少し落ち着きました。

何度か実験を行いその中で一番自然に見えるモノを使用しましたが、光を透過した時(昼)としない時(夜)のいずれも違和感無くご覧頂ける一枚になりました。

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